嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

春夏秋冬〈自然〉に生きる(2017)

著者は金峯山史上2人目となる千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)を達成した僧侶、塩沼亮潤氏。 本書は著者の何気ない日常、自分を厳しく愛情深く育ててくれた親や師との思い出、幸せに生きる術などが優しく分かりやすい言葉で書かれている。 仏教に詳しく…

楽楽関西④神戸・姫路(2016)

山あり海あり、牧場あり、温泉あり、美味しい、楽しい、学べる、全てが詰まった兵庫県。ないものがない。さすが日本のへそ、日本列島を股にかける唯一の県。欠点は色んなもの、人が集まりすぎて、いまいちまとまりがないところくらいか。柔軟性がある、今流…

山伏と僕(2012)

山伏は死者である。自らの葬式をあげ、死者が着る白装束に身を包み、手には自らの墓を表す金剛杖を、他界と考えられる山にこもり、様々な儀式を通し、生と死を繰り返す。 著者はほとんど思いつきで山形の羽黒の山伏修行に参加した。想像を遥かに超える厳しさ…

「ストーカー」は何を考えているか(2014)

著者はストーカー加害者のカウンセリングを行っている小早川明子氏。ストーカー被害者でありながらDV加害者の経験から行われるカウンセリングは加害者の病的で繊細な精神に寄り添いながら、時に厳しく正論を提示する。己の言動が正しいか常に疑いながらもス…

ゲームキャラしか愛せない脳(2010)

浮気防止に長くなった性行為、射精まで時間を要するため、生み出された愛撫と喘ぎ声。これらは人とニホンザルの特徴であるという。更に人は互いの関係性を隠すため性行為を恥ずかしいと考えるようになり、それが行為に甘美さを加えたと著者は説く。 他にもセ…

皮膚はすごい 生き物たちの驚くべき進化(2019)

人間を含む様々な生き物の皮膚の機能、進化について書かれた本。 大気中から水分を取る、根無しの植物チランジア(エアープランツ)、人間とそっくりの角層の繭を作るタピオカガエル、紫外線を吸収するカバの汗、氷点下でも凍らない「不凍タンパク質」を持つ…

荒俣宏妖怪探偵団 ニッポン見聞録 東北編(2017)

著者に荒俣氏の名が入っているが、本編は妖怪探偵団の1人、小説家の峰守ひろかず氏が担当している。冒頭のあいさつのみ荒俣氏が書いており、その文章は博識と上品さが漂い、うっとりするほど美しい。 荒俣宏氏をリーダーに荻野慎諧氏、峰守ひろかず氏の3人で…

世にも奇妙な人体実験の歴史(2012)

淋病のメカニズムを解明するため、患者の膿を自身の性器に塗る、伝染病の感染経路を調べるため患者の吐瀉物を飲む、ガス中毒に苦しみながらガスマスクを開発…など自らを実験体にした研究者達。 冒頭の「はじめに」のタイトルは「マッド・サイエンティストの…

お坊さんが困る仏教の話(2007)

以下、メモ。 戒を守り切れば悟りに辿りつける考え「律宗」が生まれ、奈良時代日本に伝わった。(29 49日は中国道教の「中陰説(死者の行方が決まるまでの49日間を中陰と呼ぶ)」と「倶舎論(くしゃろん・善悪の行いがあらゆる現象の種子となるという考え)…

わが子の感性を高める子育て 13歳の女の子に、親が教えるキーワード 感性豊かに育てるための、よりよい母子関係の築きかた(2011)

ジョーカー、化け猫家庭教師の別名(ウィキペディアより)を持つ松永氏の教育メソッド本(?)。 氏曰く、この本は「ふだんお気づきの、あるいはお気づきそうで再確認できない、女子教育の正しい方向性のご参考になることを願って、不肖私自称教育コンサルタ…

売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ(2017)

この本を手に取ったのは「売春島」という一般的に不名誉な名前の島民がどんな思いを抱えて生活しているのか気になったからだ。答えを先に書いてしまうと彼らは淡々としていた。渡鹿野島(わたかのじま)は島民曰く、仕事もなければ特産品も目玉もない島で売…

加門七海の鬼神伝説(2020)

著者は鬼を心から愛する加門七海氏。 「怖いけど大好き」な鬼の話をする著者は終始暴走気味だ。 御伽草子の酒天童子の描写が気に食わない!から始まり、桃太郎、源頼光、渡辺綱など鬼と敵対した者への罵詈雑言、果てには酒天童子へのストーカー宣言…、読んで…

アジア・中近東・アフリカの民族衣装 衣装ビジュアル資料2(2013)

民族衣装はその民族を最高に格好良く可愛く見せる、最高の服。 というのが、この本を読んだ私の感想だ。民族の魅力を最大限に引き出すため考案されたのだから当然なのだが、大量に掲載された写真は例外なく人、服、自然が見事に融合し、神々しくさえあった。…

怒らない練習(2013)

この本を手に取ったのは妙にむしゃくしゃしていたからだ。両親と喧嘩したわけでも残しておいたピノを妹に食べられたわけでも電車で隣りに座った兄ちゃんが居眠りして船を漕いでいて、何故か私の肩にぶつかってきたわけでもない。ネットにどっぷりつかってい…

鬼と日本人(2018)

鬼に始まり、片側人間(異類婚姻で生まれた子ども)に終わる。 以下、気になった点のメモなど。 仏国童子は齢130年をもって雷電と共に天に去った。(11 鬼は人間に危害を与える一方、福を招く存在である。近代に入り社会秩序が安定すると共に鬼の両義的な性…

サンカの真実 三角寛の虚構

サンカ研究第一人者、三角寛。 彼の研究のほとんどは類稀なる想像力で作り上げられた。自分の理想とするサンカ像を写真に収めるため、持参した衣装、道具を協力者のサンカに使用させ(使用後は回収)、博士号を金で購入し、自分の研究が認められないと「博士…

『カムイ伝』のすゝめ 部落史の視点から

漫画「カムイ伝」から見る部落史。非常に重いテーマで読み進めるのが終始辛かった。…というわけではなかった。本書の始まりは学生運動を始めとする激動の時代を生きた著者の青春の日の思い出話から…と書けば伝わる人には伝わるのでこれ以上は書かない。 最初…

カムイの世界 語り継がれるアイヌの心

アイヌの習慣、文化などを写真と文で紹介した本。 アイヌには宇宙を創造したカムイが存在する。釧路地方の古老は「飛行機のない時代に何故空の上に宇宙があると分かったのか」と語っている。これを読みながら思い出したのはネイティブアメリカンだ。 ゴース…

アイヌ民族の真実 疑問だらけの国会決議と歴史捏造

知識が偏らないようにと手に取ったが、著者が感情的で主張に信憑性を見出だせなかった。淡々と主張を述べ、一次資料を掲載していれば、あるいは。 アイヌ民族の真実 疑問だらけの国会決議と歴史捏造 発行:2009 著者:的場光昭 本体価格:1500円+税

新版アイヌ物語世界

メモ 人間が狩をして動物を殺し肉を手に入れるのは、人間として当然の営為であり、罪の意識を感じる必要も、カムイたちから仕返しを受けるいわれもない。しかし、無意味な殺戮は堅くいましめられるべきことである。それは、動物の命など自分の手で奪ったこと…

珍祭・奇祭きてれつガイド 日本トンデモ祭

暗闇で尻をつねる「尻つみ祭り」、その年の豊饒を占う「1人相撲祭り」、触れると厄落としになる「神男」を追いかけまくる「国府宮はだか祭り」など日本中の珍しい祭りを集めた本。文章だけでなく写真も掲載されている。 個人的に好きだったのは茨城県の悪態…

アイヌ民族の現在、過去と未来!

「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書」を軸にアイヌの歴史、権利などについて書かれた本。 内容は対話形式で進み、登場人物はアイヌの歴史認識について調べている大学生の「ノンノ」、その弟「ウパシ」とアイヌの歴史に詳しいご隠居「じい」の3…

知っていますか?アイヌ民族一問一答 新版

「壊れたレコードが同じ所をぐるぐる回るかのように、同じ質問に答えてきた」 これは二風谷アイヌ資料館、萱野茂二風谷アイヌ資料館などの館長を務めた萱野茂氏の言葉である。アイヌへの理解が深まらぬもどかしさを抱え、アイヌのため活動してきた萱野氏の言…

知ってびっくり!世界の神々(2010)

メソポタミア神話から日本神話まで世界中の神話や神々を解説した本。 世界最古の神話メソポタミア神話、最高神のいないケルト神話、異形の神々が集結するインド神話などなど類似点や相違点を探すのが楽しい。世界、人間誕生も神話によって違い、何故そう考え…

怪談実話集(2007)

幻の怪談書「怪談実話揃」を中心に大正から近代に起こった怪奇事件を集めた本。 男が浮気、不倫をし、女が恨みを持ったまま死に化け出てる話が多かった。金絡みも多く、もののけの類が出るのは47編中たったの7つ。文明が栄え、科学の発達し始めた大正から近…

鬼(1999)

様々な鬼について書かれた本。 うわなり打ち これは室町から江戸初期にかけて行われていた民間習俗で、離婚した夫が新たな妻をめとった時、先妻が予告してから後妻を襲うというものである。 引用:鬼 p118 牛頭天王のルーツはオリエント神、バアル。 鬼 発行…

鬼とはなにか まつろわぬ民か、縄文の神か(2019)

φ(..)メモ 公家にとって武家は鬼。立場を脅かす将門を鬼とみなした。鬼の体は鉄でできていると考えられ、どんな攻撃でも耐えられるが、ただ一箇所眉間(こめかみの説もあり)であるとされていた。将門は眉間に流れ矢があたって落命した。 鬼はヤマトに従わぬ…

図説日本の昔話(2003)

ものぐさ太郎が嫁がほしいと辻取(路上で女性を捕らえる)を行ったことに驚く。キルギスの誘拐婚を思い出す。ギリシャ神話にもあったのでかつては当たり前に行われていたのかも知れない。 図説日本の昔話 発行:2003 著者:石井正己 本体価格:1800円+税

漫画日本霊異記 日本人の記憶の襞に宿る、醜悪で清雅な原風景(2013)

道徳心のない古代日本人に良心を植え付けた仏教説話集「日本霊異記」の漫画版。道徳心、因果関係、仏教布教のため作られた物語は過激でエロティズムにあふれている。 自分のような不届き者は種が分かると傲慢になってしまうのでこの本を読んでよかったのか悪…

バッタを倒しにアフリカへ(2017)

ファーブルに憧れ、とある物語の影響でバッタに食べられたいと、アフリカ・モーリタニアへ向かったバッタ博士の奮闘記。著者は昆虫学者(バッタ博士)こと前野ウルド浩太郎氏。 バッタ博士はアフリカの空港に着いた途端、荷物受け取りの賄賂を要求され、研究…