嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

アイヌ民族の現在、過去と未来!

アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書」を軸にアイヌの歴史、権利などについて書かれた本。

 内容は対話形式で進み、登場人物はアイヌ歴史認識について調べている大学生の「ノンノ」、その弟「ウパシ」とアイヌの歴史に詳しいご隠居「じい」の3人である。

 著者曰く「整然とした論理を組み立てる論文ではなく、その時々の肉声と熱っぽい想いが伝わる唯円の『歎異抄』を目指し」、読みやすいのは確かなのだが、「熱っぽい想い」が強く、肝心のアイヌ問題が霞んでみえた。

 著者は小学校教師を務め、2011年に起きた「アイヌ民族副読本事件(著者が書いた文章がヘイトスピーチだとして批判された)」に巻き込まれた。この経験から教育権場のあり方、権力に対し、強い嫌悪感を抱いているようでそれが全編を通してにじみ出ている。怒りは最もであるが著者の感情が入りすぎ、話がぶれてしまっては元も子もない。

 物事を伝えたい時は「感情的にならず簡潔に」。とある心理学者の言葉を思い出した。

アイヌ民族の現在、過去と未来!

発行:2021

著者:平山裕人

本体価格:800円+税