嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

世にも奇妙な人体実験の歴史(2012)

 淋病のメカニズムを解明するため、患者の膿を自身の性器に塗る、伝染病の感染経路を調べるため患者の吐瀉物を飲む、ガス中毒に苦しみながらガスマスクを開発…など自らを実験体にした研究者達。

 冒頭の「はじめに」のタイトルは「マッド・サイエンティストの世界へようこそ」。マッド・サイエンティストは個人的にサイコパスなイメージなのだが、この本の登場人物は好奇心と使命感、勇気にあふれ、狂気じみたところはほとんど感じられない。

 もちろん、文字通り命をかけた実験を自らの体で行うのだから常軌を逸している。自分の血管に自分でカテーテルを通したり、フクロウやアナグマなどありとあらゆる動物を食したり、伝染病患者の吐瀉物を煮詰めて飲むなんて、想像しただけでムカムカしてくる。それでも私のマッド・サイエンティスト像にはまらなかったのは彼らの研究基盤に誰かを救いたい気持ちがあったからだろう。これはマッド・サイエンティストか否かに重要だと思う。

 後半はサメ、深海など「世にも奇妙な人体実験」から離れてしまい、読む気が失せてしまった。私が読みたかったのはおどろおどろしい人体実験の歴史だ。他の方がレビューに書いていたが、タイトルの付け方がまずかったなと思う。

世にも奇妙な人体実験の歴史

著者:トレヴァー・ノートン

発行:2012

本体価格:1800円+税