嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

「ストーカー」は何を考えているか(2014)

 著者はストーカー加害者のカウンセリングを行っている小早川明子氏。ストーカー被害者でありながらDV加害者の経験から行われるカウンセリングは加害者の病的で繊細な精神に寄り添いながら、時に厳しく正論を提示する。己の言動が正しいか常に疑いながらもストーカー問題に取り組む姿勢は多くの人々に安心と救済を与えてきたのだろう。

 ストーキングに至る心理、男女で違うストーカー行為、依存症と病気の観点から分析するストーカータイプ、加害者の行動、心理から見る危険度、警察対応の欠点と改善法の提案、カウンセリング内容、ストーカー被害に遭った時の対処法。事例と経験から語られる内容は信憑性があり、特に加害者のカウンセリングは著者、時間というフィルターを通し、文字に形を変えてもなお、熱を失わない。

 加害者が抱いているのは屈折した怒りだ。「傷つけられた」という被害者の盾を手に、相手を攻撃することで苦しみから逃れられると信じている。それゆえ執拗に執着し、心からの謝罪を求め、自分の提示した条件(よりを戻す、離婚、結婚など)を飲めと無茶な要求をする。自分を救えるのは自分だけだという真実に背を向けて。

 著者は「季節が移り変わるように、人の気持ちは刻々と移ろ」う。また「世の中は理屈でできてはいないし、言葉で言い表せない関係などたくさんあ」ると語る。

「人は傲慢でも、上から目線の人間であってもいいわけではない。自由なのです。他人の人格について『間違っている』と言うのはお節介です。つらい相手なら離れればいい。残酷なら逃げればいいのです」

引用:「ストーカー」は何を考えているか p59

 ストーカー問題について、複雑な感情を抱える加害者を警察だけで対応するのは無理があると著者は書く。加害者が犯罪を犯す前にカウンセリングを受けられるような仕組みを作ること、被害者との出会いは加害者を知るチャンスと捉え、カウンセラーが積極的に会いにいくこと。加害者が変わらなければストーカー行為は止まらない点にも注目し、犯罪防止を第一の目的とするカウンセリングの重要性を説いている。

 以下、引用など。

 ストーキングから出ていくには「扉」に差し込むべき「鍵」が必要。それは疑問、文句に対する特殊解。追求の前に探求が起き、自分の内面、弱さや孤独に気付くこと。

そもそも「愛する」という動詞が混乱のもとで、「愛」は「する」ものではなく、「空腹」や「貧しさ」同様、状態を表す言葉です。どうしても愛という言葉を使いたいなら、男性であれば「僕は今、あなたに愛を感じています」が正解だと思います。

引用:「ストーカー」は何を考えているか

「ストーカー」は何を考えているか

著者:小早川明子

発行:2014

本体価格:720円+税