嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

荒俣宏妖怪探偵団 ニッポン見聞録 東北編(2017)

 著者に荒俣氏の名が入っているが、本編は妖怪探偵団の1人、小説家の峰守ひろかず氏が担当している。冒頭のあいさつのみ荒俣氏が書いており、その文章は博識と上品さが漂い、うっとりするほど美しい。

 荒俣宏氏をリーダーに荻野慎諧氏、峰守ひろかず氏の3人で結成された妖怪探偵団。今回、彼らが向かったのは東北だ。

 かっぱのミイラ、尻子玉、座敷わらしが住まう宿、幽霊画、殿様が買い集めた珍品、九相図など、次から次へと探偵団の前に現れる摩訶不思議なモノ達。荒俣氏は豊富な知識とそれらを組み合わせ、新しい考えを提示し、そこに現実的なエッセンスを加える古生物学者、荻野氏。2人が言葉を発するたび、新しいピースが現れ、はまり、果てのないパズルが構成されていく。知識は人生を豊かにする。誰かの言葉が思い出される。

 知識と感情の溢れ出すまま、深く深く思案の海に潜っていく2人の後を追い、読者を引っ張っていくのは峰守氏だ。読者と同じ視点の案内人、峰守氏がいなければ私は最後まで読み進めることが出来なかっただろう。どういう経緯でこの3人が集まったかは不明だが絶妙なバランスだ。

 宮沢賢治南方熊楠、岩手と和歌山の繋がり、様々な文化が混ざり合い、古来より最先端を歩んでいた東北。新事実や珍しい習慣もさることながら写真も豊富で東北に足を運びたくなった。

荒俣宏妖怪探偵団 ニッポン見聞録 東北編

著者:荒俣宏、荻野慎諧、峰守ひろかず

発行:2017

本体価格:1600円+税