嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ(2017)

 この本を手に取ったのは「売春島」という一般的に不名誉な名前の島民がどんな思いを抱えて生活しているのか気になったからだ。答えを先に書いてしまうと彼らは淡々としていた。渡鹿野島(わたかのじま)は島民曰く、仕事もなければ特産品も目玉もない島で売春はそんな島に潤いを与えてくれた存在だった。もちろん、事が事なので口にするのをはばかる人もいた。十人十色。当然である。

 人と欲と金がむせ返るほど溢れかえっていた島は現在、衰退の一途を辿っている。過去のイメージを払拭するクリーン化が進められているが成果は芳しくないようだ。もう1度女の子を!という声もあったが風俗の多様化、世間体など様々な事情から渡鹿野島が売春島に戻る可能性は低いだろう。今でも細々ではあるが置屋は存在する。

 本編の前半は人身売買ブローカー、ヤクザ、金のため彼女を売り飛ばした男、島から命からがら抜け出した少女など常識や倫理の崩壊した話が次々と語られ、平常心を保つのが大変だった。

売春島 「最後の桃源郷渡鹿野島ルポ

著者:高木瑞穂

発行:2017

本体価格:1600円+税