嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

残酷な幸せの真実「しあわせなわたし」

 しあわせなわたし。でも隣りにいる人はしあわせなひと?

 繰り返し描かれる、正体不明、でも仲が良さそうな二人の何気ない日常。美味しそうな食事を取り、温かそうな布団で眠る。一日の終わりに表示される「しあわせ!!!」。戦争やパンデミックなど、これでもかと騒がしい世界に生きる私には二人の穏やかな毎日が羨ましくてしょうがない。しかしその羨望も日を重ねるごとに消えていった。

 クリックするたび日が進み、徐々に浮き彫りになる幸せの犠牲。それでも一日の最後に表示される「しあわせ!!!」の七文字。不気味さよりも恐怖を感じたのは「しあわせ!!!」に嘘偽りがないことだ。本当に、一ミリも嘘がない。幸せだろう、と思った。あくまでも、あなたは、と。

 人間関係で大切なのは相手を観察することだ、と私は思う。それを怠り、自分だけに目を向けてしまうと会話はおろか、関係を築くのも不可能になる。仮に出来たとしても歪な形となり、相手をないがしろにしてしまう。

 このゲームの登場人物も自分の幸せに執着するあまり、相手が見えなくなってしまっていた。こういう光景は何度も見てきたし、自分にも身に覚えがあるので後悔の念で消え入りたくなる。反省の意味も込め、独りよがりの幸せを避けたいが、独りよがりではない、犠牲のない幸せはどこにも存在しないような気がする。宇多田ヒカルことヒッキーも歌っていたように「誰かの願いが叶うころあの子が泣いてる」。

しあわせなわたし

ジャンル:ホラー

推奨年齢:?

制作:ここにゃん

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