嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

薄暗い場所で優しくして「欠損娘を慰める」

「自由に生きられないなんて、死んでるようなものでしょ?」

 静かに、しかし悲痛の叫びをあげたのは主人公の従姉妹、日暮とまり。彼女は事故で家族と手足を失った。一瞬にして全てを失った彼女は現実を受け入れられず、家に閉じこもっていた。彼女を支えるのは昼にやってくる、若く一生懸命な介護士と主人公。2人はとまりを支え、彼女の幸せを心から願っていた。

 その純粋な、一般的には善でしかない願いと優しさは非情にもとまりを苦しめる。自分はもう2度と、1人で食事にトイレ、友達に返信すること、自分の涙をふくこともできない。若く、輝かしい未来が待っていたはずの彼女の絶望は想像を絶する。

 さらに彼女を苦しめるのは彼女自身だ。真面目で思慮深い彼女はこれだけ辛い状況にあるのにもかかわらず、感情や思いを外に出さない。何もできない自分は感謝こそすれ、辛さを表に出すのは罪だと言わんばかりに主人公にありがとうを繰り返し、笑顔を絶やさない。

 家に引きこもったまま、リハビリはおろか食事量も減っていくひまり。このままでは病気になってしまうと心配した主人公は彼女と真正面から向き合う。短い会話の中で交わされたのは彼女が抱える絶望の1滴。彼女はこの状況になってもなお、相手への思いやりを忘れない。いや、それが今の自分が出来る唯一の行動だと思い込んでいるのだろう。

「優しくされるたびに、あたしってなんてだめなんだろうって」

 胸がつまり、言葉を失う。1歩間違えればひまりの精神が崩壊するであろう言葉に主人公は果敢に立ち向かう。

 エンディングは2種類。どちらもハッピーエンドではあるが、私は彼女の満面の笑顔が見られるエンディングの方が好きだ。

欠損娘を慰める

ジャンル:インモラル

推奨年齢:15歳以上

制作:あたまっと

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