嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

Escape from M(ブラウザ版)

 このゲームの主人公は自分を含む、全てに鬱陶しさを感じている。そのくせ恋人を作り、友人と飲みに行く矛盾。彼女もそれに気付いているから、まるで逃げるように酒を飲む。

 寂しい。

 人に甘えたくて、甘やかされたくて、ありのままの自分を愛してほしくて仕方ない。しかしその条件を満たすには人とぶつからなければならない。でも傷付きたくはない。

 物語は酒の飲みすぎで気を失った主人公が見知らぬ男の家にいたところから始まる。その家から脱出するため、部屋を探索しながら失われた記憶を思い出していく。

 私はこのゲームがとても好きだ。

 臆病さからくる他力本願と責任転換、努力を放棄した2人の情けなくも切ない傷の舐め合い。生きづらさを微塵も感じた経験のない一部の、強い人々から鼻で笑われてしまうような生ぬるいエンディング。

 世界を恨みながら愛されたいと願おうが、悲劇のヒロインぶろうが、偽善で人を助けようが構わない。この作品は批判されがちな言い訳や強がりを肯定し、生きづらさを抱える全ての人々に寄り添う。昼夜を忘れ熱中するでもなく、思い出した時に遊ぶ、付かず離れずの距離感。私にとって逃げ場のような癒やしのような不思議で大切なゲームだ。

Escape from M(ブラウザ版)

ジャンル:乙女ゲーム

推奨年齢:15歳以上

制作:むらさきくまねずみ

www.freem.ne.jp