嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

メンタル童貞ロックンロール(2019)

初出:前ブログ

作品情報

著者:森田哲矢さらば青春の光) 2019年発行

著者、内容について

 ダ・ヴィンチニュースで約3年半連載されていたコラム「煙だけでいい……あとはオレが火を起こす!」を書籍化。著者はお笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢キングオブコントM-1で優秀な成績を残している実力派。

 自らをメンタル童貞(モテないため女性の扱い方が分からない。そのくせ性欲は人一倍ある)と呼ぶ、森田氏の異常なセックスへの執着、風俗体験をテンポの良い文章で書いている。

感想

セックスのためならば

 本人も書いている通り、内容、登場人物全員がゲスい。しかもほぼ全員、セックスへの執着が強い。エロスの規制が強くなっている、このご時世に(正常化している?)森田氏が女性にかけるのは「セックスさせてくれ」だの「手こきしてくれ」だの、最低最悪、炎上必須の言葉のオンパレード。

 セックスのためなら、たとえ火の中水の中、台風の日に風俗へ行き、先輩を利用することも厭わない。あの手この手でセックスにこぎつけようとする執着心は呆れを通り越して、脱帽する。

ごめんって気持ちがあるんやったら…

 お気に入りの回は「ちょいちょいテレビに出てる芸人の壮絶な性の現場」。

さらば青春の光の本人に似ている森田氏」が気になり、サービスを怠りがちになった風俗嬢。苦悩の末に森田氏は「本人だ」と白状する。失礼なことをしたと謝る風俗嬢に森田氏は言う。 

「そんな事どうでもええからとりあえずプレイに集中して! ごめんって気持ちがあるんやったらプレイで返して!」(引用:「メンタル童貞ロックンロール」)

 シチュエーションといい、台詞といい、必死さといい、笑うなという方が無理だ。

 第7世代、仲の良い芸人の影響でクリーンなイメージが強かった芸人像がこの本のおかげで見事に崩れた。怒りよりも愛おしさに似た感情が湧いたのは、笑いのセンスが光る文章と森田氏のゲスが度を越しているからだと思う。

 2020年のM-1で上沼恵美子氏が言っていた「ゲスが突き抜ければ芸術になる」のは本当だった(実際は「バカバカしさが突き抜ければ芸術」)。

 いつかのアメトーーク!でEXITの「かねち」こと兼近氏が「芸人を格好いいと思ってもらいたい」と話していたが、この本を読んだら「芸人=格好いい」の方程式はいつまで経っても成り立たないと思う。

 もちろん、ゲスなのは森田氏とその仲間達だけです。…と思いたい。