嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント(2019)

 過激なタイトルで思わず手に取ってしまった。ニュースで見かけるのは介護者から利用者へのハラスメントで、どういう訳かその逆はほどんど報道されない。

 本書に書かれたハラスメントの実態は驚きの連続だった。著者は在宅ヘルパーなのだが、正直これだけで怖いと思った。介護は基本同性介護が基本とされている。しかし業界は常に人手不足だ。つまり単身、異性の家に行くしかない。著者曰く、高齢になっても性欲は枯れないという。

 皿洗い中、いつの間にか背後に利用者が立っている、抱きつかれる、アダルトビデオを観せられる、入浴介助中、性器を洗うように頼まれる…。

 トラウマレベルの出来事にあっても強い責任感から逃げ出さない人がいると知り、空いた口が塞がらなかった。

 そんなやつ1発退場でいい。

 個人的に真面目な人が辛い思いをするのは本当にきつい。更にきついなと感じたのは、ハラスメントが日常化し、上司や周りに相談しても流され、解決してもらえないことだ。

私の経験でも、事業所や同僚に相談しても「しかたがない」「あなたにもスキがあったんじゃないか」などといわれ、何の対応もされず、泣き寝入りしたことがあります。

引用:介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント

 後期高齢者認知症患者が爆発的な勢いで増えている日本。介護職は必要不可欠な職業なのに、どうしてこんなに悲惨な状態なのだろう?政府は国財を圧迫する社会保障を減らすため、在宅介護を推薦し、1時間あった介護ヘルパーの訪問時間を45分に減らしてしまった。これでは寄り添う介護などできるはずがない。

 ついセクハラに重点を置いてしまったが、意外にもパワハラの方が多いという。中腰で作業するように強制する元ヘルパー、ヘルパーを拒否し、杖を振り回す元大学教授、几帳面すぎる家族からのメチャクチャな要求…などプライドが高い人ほど、問題を起こしているように感じたのは気のせいだろうか。人によって介護を受けるのは想像以上に惨めなのかもしれない。しかし、何の罪もない介護者をサンドバッグにしてはいけない。

 ネガティブなことばかり書いてしまったが、海外の介護者支援も紹介されており、介護業界に光をもたらすヒントになるのではないかと思った。ドイツの介護家族への現金給付、利用者制限のない介護保険制度、韓国の「感情労働者従事者の権利程などに関する条例」など、とにかく何の罪もない人が傷付くのはもう終わりにしてほしい。