嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

超訳ニーチェの言葉(2010)

初出:前ブログ

作品情報

著者:フリードリヒ・ヴェルヘルム・ニーチェ

編訳:白鳥晴彦

2010年発行

定価1870円(税込)

内容

 ドイツの哲学者・ニーチェの書籍の中から、現代人に役立つ言葉を選別し、まとめた本。

感想

 収録されているニーチェの言葉は232に及び、分厚さは聖書並みだ。愛、己、心などにカテゴリー分けされ、量こそ多いが1つ1つの言葉は短い。読むスピードが早い人なら、一週間もかからず読み切れるはずだ。毎日、1ページずつ読んでも232日しかからない。

 当時、絶対視されていた教会への批判、「神は死んだ」というインパクトのある台詞、神経質そうな鋭い目、几帳面に整えられたヒゲ。私の中でニーチェは、狂人に近い過激な哲学者だった。そもそも哲学者だと知ったのも、つい最近なのだが。

「自分の人生をまっとうさせるために、まずは自分を尊敬しよう」

「できるだけ幸福に生きよう。そのために、とりあえず今は楽しもう」

「誰かを喜ばせることは、自分をも喜びでいっぱいにする」(引用:「超訳ニーチェの言葉」)

 どれもこれも100年以上も前の言葉だとは思えないほど、瑞々しく生き生きしている。ニーチェの人への愛、人生への誠実さ、目に映る全てへの愛が文章に満ち溢れている。当然、狂気は微塵もない。

・ゴタクはいいから、前に進め。人生を楽しめ!

 ニーチェの思想は「生の哲学」と呼ばれているという。他の哲学に触れた経験がないので「死の哲学」がどんなものか、存在するのかさえ判断が付かない。

 彼の思想や言葉が生きる人々に向けられていた。環境や状況、時代は違えど「生」は万人共通だ。だからこそ、彼の残した言葉は死後も廃れず、今もなお、大勢の心を揺さぶる。

 私が好きな言葉は「嘆きわめくことなんか、オペラの役者にまかせておけ」。「死ぬのは決まっているのだから」から始まる文の一部だ。ニーチェの洒落っ気が良い。