嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

雨の玉川心中 太宰治との愛と死のノート(1977)

 太宰と心中した山崎富栄の日記。

 日記に綴られているのは太宰の乙女ゲームよろしく甘ったるい気障な台詞の嵐。こんなこっ恥ずかしい台詞を言える人間がこの世に存在していようとは。人間失格の葉蔵のような小心からくる過剰なサービス精神ゆえなのだろうか。そんな太宰を富江は「人生のピエロ」、坂口安吾は「常識的な男」と称した。どちらが正しいのだろう。多分どちらも正しいのだろう。

 自分の都合よく働き、心身、金さえも面倒を見てくれる富江は太宰にとってなくてはならない存在だったようだ。共依存のようにみえるが相手はあの太宰である。

 関係ないが昔の人の文章はどうしてこんなに美しいのだろう。現在を生きる自分が真似をしても文字通り猿真似にしかならない。なんだか悔しい口惜しい。

追記:20220910

いろいろ考えてみても、修治さんの仰言る通り、たとえ、私を方便的に一時は利用していたとしても、胸を開いて、いま、心を読まして下さるのは、私一人きり。

引用:雨の玉川心中 太宰治との愛と死のノート

 前回の覚書を書いた後、またノートを読み返した。富江は「人生のピエロ」に利用されていると気付きながらも太宰を支えていたのか?真相は2人のみぞ知るだが、太宰側の視点がほしい。

雨の玉川心中 太宰治との愛と死のノート

発行:1977

著者:山崎富栄