嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

インディアンという生き方 夢にかよう魂(2001)

 ネイティブアメリカンの信仰対象は自然である。日本の神道に似ているが彼らの方が純粋で繋がりが強いように感じる。彼らは木々や動物の声を聞き、母なる大地を傷つけるのを嫌い、取った獲物は残さず食べ、毛皮など全て利用する。

 彼らの儀式や考え方は神秘的で不思議なものばかりだ。ゴーストダンス(手と手を繋いで踊るダンス。キリスト教徒とネイティブアメリカンの信仰が混ざりあい出来た)によりトランス状態に陥った人間が握っていたのは「星のかけら」だった。

別の世界から持ち帰った土産を大切にしてきた、昔からずっとつづいている家では、アメリカが月面を歩いたときにだしてきて、まじないの布きれでくるんであった包みをほどき、なかからでてきた石を月の石に間違いないと確信したという。

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p13

 ネイティブアメリカンにとって夢は私達に想像がつかないほど重要である。彼らの夢の中に出てきたイエス・キリストネイティブアメリカンだった。

「(略)その方の両手と両足には、残虐な白人どもが大きな十字架に磔にしたときの釘の跡が残っていたからだ。……おまえたちは踊りつづけなさいとおっしゃり、その方は白人は一人たりとも神の国に入れないし、神がインディアンのために用意してくださっている良きものを、何人たりとも分け与えることはしないと約束してくださった。(略)」

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p24

 聞く人が聞いたら泡を吹いてぶっ倒れそうな証言である。彼らのシンボルであるサークル、魂の旅、予言的な夢といい、様々な宗教や神話に似ている点があるのは何故なのだろう?人間みんな考えることは同じといってしまえばそこまでだが、古代の人々、いやかつて人間はみな超人的な力を持っていたと考えると楽しい。そうなると現代人のほとんどが退化した成れの果てといえるのだが。

夢に何かが降りてくるようになるまで、ヴィジョンを求めなくてはならないが、そのために独りで山に登るよりも前にすべきことは、スエットバスで自分の身体を清めることである。

スエットロッジで身も心も清めることは、すべてのネイティブ・アメリカンが共通に持つ習わしである。宗教的な儀式を執り行うときにはたいてい、ほとんどどの部族でも行っている。マヤやアステカの人びとは、スペイン人がやってくるよりもはるか昔から蒸し風呂をつかっていた。

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p35

 日本以外にも清めの概念があったとは!と驚いたが自分が無知すぎるのかもしれないと驚きを心の奥底にしまった。

夢をめぐる儀式でも、とりわけ真剣に行われるのがヴィジョン・クエストである。これはまず、クエストを行おうとする者に決められている聖なる場所である「山に登る」ことから始まり、そこで断食をしてまったく独りきりで四昼夜を祈りつづけて「ヴィジョンを乞い願うのである。なかには腰布一枚だけで裸になって、ひとけのない山の頂上にある木や石によりかかってこの儀式をするという、ごく簡単に済ませる人もいる。(略)」

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p46

 他のものに例えるのは失礼だろうが、ヴィジョン・クエストやストーンヒューマンは瞑想に近いものなのだろうか?

わたしたちはもう、自分たちの文化から離れてしまったところにいます。わたしたちの親は、自分たちの土地に根ざした社会に生きて、何をするにも、何を考えるにも、自分たちが住んでいる土地に結びついた生き方をしています。わたしたちはもう、そんな親しい結びつきを感じることはありませんし、だからでしょうが、親たちから見たらこちらの生き方がわからないのと同じように、わたしたちは親たちを理解することができなくなってしまっています。

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p163

 これは「ナハボ・タイムズ」に寄せられた読者の声である。伝統や文化から離れ生活するネイティブアメリカンの不安は、様々なものを犠牲にし発展してきた日本に生きる私でも何となく理解できる。

 私だけかもしれないが便利になりゆく世界を生きながらとても大切なものを忘れている気がしてならない。それを取り戻す方法がわからない、そして退く勇気もないまま、あらゆるものを貪り、死んでいくのだろうとぼんやりと思う。

 以下、気になった文章の引用。

彼だけでなく、ほかのいろいろな部族の者たちが、インディアンのシンボルはサークルだが、白人のは四角だという。(略)

「ワシチュ(白人)はなんでもみな四角だ。白人の家も部屋も四角い。四隅が鋭く角ばっている」

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p11

「われわれが生きていると思うものを、白人は死んでいると考える」

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p11

おれの横に並んでくれ、頭の上に立つのではなく

インディアンという生き方 夢にかよう魂 p80

インディアンという生き方 夢にかよう魂

発行:2001年

著者:リチャード・アードス

訳:仙波喜代子

本体価格:2200円+税