嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

絶句「アオハル・モトムに追われてる」

 青春を求める狂人「アオハル・モトム」にストーキングされるゲーム。

 想像を遥かに凌駕する狂気を前に、私は言葉を失っている。ほんとうに、うしn…。

アオハル・モトムに追われてる

ジャンル:ノベル

推奨年齢:?

制作:快亭木魚

novelchan.novelsphere.jp

湧き出る疑問の泉「なんで」

 暗闇の中で問われる「なんで」。ここがどこなのか、どうして暗闇にいるのか、何も分からないまま主人公は闇を彷徨う。

 本当に何も分からなかった。隠しエンドを見れば全貌が分かるのかも知れないがゲーム勘が絶望的に悪いのでたどり着けなかった。悔しい。なんで。

なんで

ジャンル:ホラー

推奨年齢:?

制作:なんで

novelgame.jp

笑いの哲学(2020)

 ポリコレとは「政治的公正を意味する。劣位に置かれていると思われる人々が自分は優位にあると思い込んでいる者から被ってきた差別、偏見を是正し、政治的また社会的に公正で中立な姿勢と求める」。

 ええことやと思うけど、最近のポリコレだるいな…。

 色んな意味で批判を受けそうな感想を抱いているのは私だけではないと信じたい。一部の人々のせいで世の中の風通りが悪いなと感じるのも私だけでないと思いたい。私はゲームが好きだから、ちょこちょこポリコレの噂は聞いていた。

 発案者やそれらを取り巻く国、文化などを一切無視し、「私(俺)が不快だから間違っている」と自己中心的な正義の元、対象を叩き潰す様はまさに現代に蘇りし魔女狩りだ。一部の人間のため、様々なものが規制され、世界は色を失っていく。もちろん規制があるからこそ、新たな創意工夫が生まれる場合もあるが素人目に見ても最近のポリコレは行き過ぎている。

 さらにそこへ参戦してくるのが「マイクロアグレッション」。この言葉は本書で初めて知った。マイクロアグレッションとは「ほんの些細な攻撃性を意味する。この概念の特徴は攻撃した側にしばしば悪意の自覚がないことであり、ゆえに自覚なき差別と言われる。加害者とみなされる者に攻撃の意図があったか否か以上に、加害者とみなされる者の言動の解釈に重点が置かれている」。

_(:3 」∠ )_

 どうしてこう一部の人達は自らを低位置に、被害者として振る舞いたがるのだろう?ここからは私の想像になるが、彼(彼女)らは世界が怖くてしょうがないのではないだろうか。人は心身共に脆弱で、少しでも不安があれば排除したくなる生き物だ。一部の過激なポリコレの原動力になっているであろう猛烈な怒りは安心を得るための怒りだと思う。

 これは彼らに限った異常反応ではなく、人間の、もっといえば生き物の本能で悪いことではない。しかし彼らがまずいのはこの世の全てを「自分達が認めた、安全なものだけが存在する世界」に作り変えようとしている点だ。それが不可能なのは人種や性別など、様々な差別と戦う彼ら自身、十二分承知しているはずだ。安心を求め、過度な規制を行った世界は狭く、息苦しく、最終的に自分を殺すはめになると私は思う。

 話がたいぶ逸れた。本書は笑いの本だった。ポリコレとマイクロアグレッションは「優越の笑い」の章に登場し、話の中心ではないのだが個人的に色々思うことがあったのでつい長々と書いてしまった。

 お笑い好きを称する著者はダウンタウンやナイツ、スギちゃん、オードリー、IPPONグランプリ、ラジオなどを引用しながら西洋と日本の笑いの違い、笑いの仕組み、種類、ネタの構造などを細かく分析していく。ナイツの何十にも張り巡らされた笑いの罠、人を笑わせる難易度の高さに驚き、それを職に選んでいる芸人の勇気と素晴らしさに感動した。

 特に興味深かったのはダウンタウンの浜ちゃん(浜田雅功)の言葉だ。人気が高まり、ダウンタウンが舞台に登場するだけで爆笑が起こるようになった。

だいたいお客サンにしても、”こいつら世間一般からおもろいとされてるから、何いうても笑ろうてまうわ”というのでは、レベル低過ぎると思いません!?偉そうないい方やけど、笑う以上に、笑う側もまたレベル気にして欲しい、感性を磨いて欲しいし、勉強もして欲しいんです。そうやっていっしょになってやってくれへんかったら、芸人はホンマ、ダメになってしまいますよ。

引用:浜田雅功「がんさく」

 私は笑いのことは全然分からないけれども、芸人のネタ作りは観客に担ってもらわなければならない部分があると思う。ネタの完成度を高めるため、観客の反応は必要不可欠で、そもそも観客がいないと芸人という職業が成り立たない。つまり芸人と観客は運命共同体だ。だからこそ私達観客も一緒に感性や勉強をしないと芸人がダメになってしまうと浜ちゃんは語ったのだろう。

 確かに思い返してみると観客に甘やかされるだけ甘やかされ、ネタも腕も磨けず、結局観客の熱が覚め、「冷静に考えるとこの人達、面白くないな」と烙印を押され、忘れ去られていく人気芸人を何度も見た。星の数ほど居る芸人の中で一発屋だろうが何だろうがテレビに出られること自体、とんでもない奇跡だ。

 でも前々から知っている芸人、正統派漫才師が世間の要求によって奇抜な芸を行っているのを見ると、こう何とも言えない腹正しさと切なさを覚える。でも本人が納得しているなら言うことはないし、どんな形でも売れて美味しいご飯をたらふく食べてほしいし、…複雑だ。

笑いの哲学

著者:木村覚

発行:2020

本体価格:1750円+税

ひらめきの導火線 トヨタとノーベル賞(2008)

日本人には創造性がない。

日本人には個性がない。

日本人には独創性がない。

 本編で当たり前のように語られる日本人の欠点。著者の茂木さんは実際、外国人にも指摘され、自身でもそう感じ、世界の常識だと思い込んでいるようだった。私は日本から出たことがないけれども、こんな事夢にも思わなかったからとても引っかかった。母国を馬鹿された怒りではなく、茂木さんのネガティブさに引っかかったのだ。私の知る限り、茂木さんは母国を叩いてお金を稼ぐような人でも感情的な人でもない。

 他国や他人を馬鹿にする人間は人種、性別、年齢に限らず、無知からくる優越感、自分の不幸せを紛らわしたいがための八つ当たりが多いように思う。そもそも国も人も短所と長所があり、総合的に見れば、どれもどんぐりの背比べだ。何を言われようが気にしなきゃいいのに、そう思うのに茂木さんはどこまでもネガティブの海に沈んでいく。

 文章、行間からにじみ出る西洋コンプレックス。本編で登場する日本をけなす外国人とその言葉を素直に受け取りショックを受ける日本人。本書を読み進めながら、ふと、この人は自分でも気付かないくらい大きな孤独を抱えているんじゃないか?と思った。

 茂木さんは11歳の時読んだ「赤毛のアン」の登場人物や生活の背景に貫かれる人間らしさに敗北感を覚えたという。その後、語学研修のため訪れたカナダでも広々とした家や庭などを見て、同じような敗北感を味わっている。

 この体験はどちらも自由と個人の尊重が共通しているように思う。茂木さんは個性的な考えの人だから、幼少期から「和を以て貴しとなす日本的な集団生活」に馴染めなかったのかもしれない。その孤独や寂しさが自分を受け入れてくれなかった日本への怒り、西洋コンプレックスに繋がったのではないだろうか。

 茂木さんが執着する日本の三つの欠点、独創性と個性、創造性の有無は個人差の問題であり、国でくくれるものではないはずだ。そんな当たり前に気付かないほど、茂木さんの孤独は強かったのかもしれない。脳科学の先生でさえ、自分の考えの矛盾に気付かないんだなあと親近感が湧いた。

以下、メモ

 脳科学者は神経細胞が活動することを発火する表す。仏教は煩悩を炎と例える。この共通点に仏教好きは興奮した。

ひらめきの導火線 トヨタノーベル賞

著者:茂木健一郎

発行:2008

本体価格:680円+税

ヒトはなぜ突然怒りだすのか?(2013)

 仏教の匂いがする!と手に取ったら、案の定禅僧、藤田一照さんと著者の対談を発見し、着々と仏教アンテナ(?)が育ちつつあるなとにやり。著者はシステマ使いで、本編ではシステマ呼吸法がいかに怒りに有効かを書いている。システマの良さは吸って吐くだけなので、いつでも誰でも簡単に出来る。大切なのは鼻から吸って、長く強く息を吐くこと、とのこと。

 が、自分の中でシステマ=ピーマズンズスタンダード、みなみかわ(明らかに痛い目にあっているのに数回呼吸した後「全然痛くないです」と言い張る)のネタの印象が強く、本当に効くのか半信半疑だ。みなみかわの罪は重い。話は逸れるが、ロシア生まれのシステマに限らず、瞑想でも呼吸を見つめる、数えるなど呼吸に注目する。呼吸は私が考えている以上にすごい存在なのかもしれない。

 著者はイライラとするシステマ呼吸を始めるので奥さんから「喧嘩の時は呼吸するな」と注意されているらしい。最大の武器を封じられている著者に笑う。システマ使いの奥さんが怒りに振り回されているのにも笑う。

 著者曰く、怒りはメッセージ。恐怖心、死への恐怖が根っこにある。怒りからくる緊張は自分を大きく見せようとする原始的な名残。怒っている相手と接する時はよく観察し、幼児に接するようになだめること。

 こういうのを読むといかに怒りがダサいかが分かって、なるべく怒らず生きていこうと思える。かといって怒りを悪だと決めつけるのは危険だ。怒りは上手く使うと大きな原動力になる。でも自分の知る限り、怒りを上手く扱っている人間は漫画でしか見たことがないし(友人を殺されて怒り狂って強敵を倒すとか)、やっぱり怒らないのが賢い選択なのかもしれない。

 本書は怒りの予防、抑える方法が主でタイトルの「人は何故突然怒りだすのか?」について書かれていない。最近、本に限らず、こういうタイトル詐欺が多いような気がする。本も売れなくなって久しいので仕方がないのかも知れない。が、本離れを加速させないか心配だ。

ヒトはなぜ突然怒りだすのか?

著者:北川貴英

発行:2013

本体価格:860円+税

東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方 予想外の時代を生き抜くためのヒント(2013)

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東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方 予想外の時代を生き抜くためのヒント

著者:上田正仁

発行:2013

本体価格:1300円+税