嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

お友だちからお願いします(2012)

初出:前ブログ

「お友だちからお願いします」と、言ったことも言われたこともない。

 超ネガティブな言葉から始まる本書は小説家三浦しをんのエッセイである。自由気ままな日記ブログをまとめた「ビロウな話で恐縮です日記」と打って変わり、こちらは様々なメディアで発表した、真面目なエッセイ(?)を収録している。

 本人曰く「よそゆき仕様」らしいが、読み手からすると同意しかねるのが本音だ。悪い意味ではなく、今回も私の中にあった高貴な小説家像をブルドーザーで破壊していったという、いい意味です。

 マナー、旅などをテーマに三浦しをん節が炸裂。表面上は非常にのんびりした性格でありながら、降車駅の一つ前で切符を握りしめるせっかちさ、援助交際であろう少女とおっさんを見かけ、少女と自分が入れ替わる妄想をしたり、電車で盗み聞き…。今日もしをんさんが、楽しそうで何よりです。

 1エピソード、2ページほどの短編にもかかわらず、内容が濃い。とにかく濃い。普通、味の濃い料理が続くと手が止まってしまうが、お茶漬けのようにさらさら読めてしまうのは三浦しをんの手腕のなせる業だろう。

 本人はエッセイを読み直し、自分の駄目っぷりに「お友だちですら御免です」と思ったとのこと。私も付き合うより、離れたところから観察して楽しみたい。

作品情報

著者:三浦しをん

発行:2012年

本体価格:1400円+税