嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

ビロウな話で恐縮です日記(2009)

初出:前ブログ

 本書は同名のブログ記事を取捨選択し、まとめた本である。著者の三浦しをんは2000年「格闘する者に〇」でデビューした小説家。

 面白いエッセイが読みたくて検索していたところ、本書を発見した。一番上に表示されていたレビューは「電車の中で読んで吹き出してしまいました!」。あらゆる場所で何千回と使用されてきた感想に若干読む気が失せた。

 頭に「私はよく本を読むのですが」が付いていなくて良かった。素晴らしい文章を大量に摂取しておいて、その平凡な感想はねえだろ!と噛み付くところだった。危なかった。

 手あかレビューの信用度はマイナス500。それでも面白エッセイを読みたい欲にかられ、1300円+税を握りしめながら、本屋へ自転車を走らす。店内を巡回しながら、脳内で浮かんで消える、手あかレビュー。帰り道に寄った図書館で偶然この本を見つけました。ありがとう、図書館。

 小説家のエッセイは若干の堅苦しさ、完璧な構成力と美しい文章から、話自体は面白くても笑えない場合が多い。しかし、本書はエッセイではなく日記。いい意味で堅苦しさがない(失礼)。この後、三浦しをんのエッセイを読んだが、雰囲気はそのままだった。これが素なのだろう。つまり、それは…。

 汚部屋、異常な本、漫画愛と食欲、個性的な三浦しをんの脇を固めるのは、さらに個性的な家族と友人達。ページをめくるたび、文豪が作り上げた高貴な小説家のイメージを豪快に覆される。かざりっけのなさすぎる文章と生態に驚き、度を越したドジっぷりに本人と一緒に頭を抱え、独特な価値観に首をかしげた。あとがきを読んで思ったのは、ビロウでもなんでもいいからもっと読みたい!

 収録されている日記はブログから削除されているが、それ以外は残っているので読み足りない方は是非。

 電車の中で読んで吹き出してしまいました!

 手あかレビューが、真実を語ることもあると教えてくれた一冊だった。

作品情報

「ビロウな話で恐縮です日記」

著者:三浦しをん

発行:2009年

本体価格:1300円+税