嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

先生、モモンガの風呂に入ってください!(2012)

初出:前ブログ

作品情報

2012年発行

著者:小林朋道

本体価格1600円(税抜き)

著者

 小林朋道(こばやし ともみち)

 1958年8月24日生まれ、岡山出身。

 日本の動物行動学者であり、公立鳥取環境大学環境学環境学科教授。

 1993年4月岡山県野崎教育賞受賞。

ヒトを含めた哺乳類、鳥類、両生類などの行動を、動物の生存や繁殖にどのように役立つかという視点で調べてきた。現在は、ヒトと自然の精神的なつながりについての研究や、水辺や森の絶滅危惧植物の保全活動に取り組んでいる。

(引用:「先生、モモンガの風呂に入ってください!」著者プロフィール)

著書

「通勤電車の人間行動学」

「人間の自然認知特性とコモンズの悲劇 ? 動物行動学から見た環境教育」

「先生!」シリーズなど。

先生、管理人さんが本書を紹介するって言ってます!

 先生!シリーズ、6作目。

 著者の小林先生は1日のうち少しでも生物との触れ合いがないと体調不良になる、超自然好き。

 本人曰く、虚弱体質の理論派。

幻のカエル発見!?

 レッドリスト入りしている巨大コウモリ、オヒキコウモリを初めて鳥取で捕獲したのは何を隠そう、小林先生だ。詳しい内容はシリーズ1作目「先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」をご覧いただきたい。

 先生はその後も大いなる好奇心と使命感を抱きつつ、オヒキコウモリの繁殖地を探していた。目を付けたのは大学から車で西へ30分ほどの場所にある、山の洞窟。この洞窟はキクガシラコウモリの寝床であり、季節が冬だったこともあり、コウモリ達は冬眠していた。

 先生は真っ暗闇の洞窟をたった1人で進んで行く。何が起きてもおかしくない、人里離れた洞窟での探検。先生はそこで見たことのない幻のカエルと出会う。

モモンガプロジェクト

 2009年8月、先生は学生たちと共に鳥取県智頭町芦津市の森の木々に100個ほどの巣箱を取り付けた。樹上性の小型哺乳類や鳥類の生態や生態調査のためである。

 2010年の冬、先生はモモンガと出会う。

 本書を読んでいると小林先生は超弩級の自然狂で動物行動学者、環境学科教授であることを忘れてしまう。思い付いたら即行動、好奇心の赴くまま突っ走っているように見えるが、先生は常に日本や地球の環境問題の改善について考えている。

 快さを求める「経済活動」、そのスピードが増していく「経済の発展」、このままでは自然が荒廃し、快さを作ることが出来なくなるにもかかわらず、”自分がやめても他の人が作るから”という損得勘定で作るのをやめられない「コモンズの悲劇」。(先生はもっと分かりやすく説明している)

 人間が快さを求めるあまり、限度を超え、自然を破壊してしまわないよう、むしろこれらの心理を上手く自然保護に繋げられないか。先生が思いついたのは「モモンガの森の水」。水を買うことでモモンガの森の保護に繋がる、いわゆるエコツーリズムだ。

 ※エコツーリズム

「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」

(引用:環境省ホームページ「エコツーリズムとは」)

「取り組みの起点が生粋の動物学者」、「野生生物の研究の中に、はっきりと、地域の活性化という取り組みを織り込んだ事例は少ないのではないだろうか?」と先生は考える。思い立ったら後先考えず走り出してしまうのが、小林先生の長所だ。

 忍たまの学園長の如く、素晴らしい思い付きを先生は無事、達成できるのか。

1番興味深い生物は小林先生

 カエルやモモンガ以外にもオタマジャクシを食べるイモリや頻繁に脱皮するイワガニの謎など、小林先生の好奇心はとどまるところをしらない。

 教授らしからぬフランクな雰囲気、滑りがちなユーモア、先生!シリーズで1番興味深いのは小林先生自身だ。個人的にいつか先生について書いた本を出版してもらいたいと思っている。