嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

超約版 方丈記(2022)

 日本三大随筆の一つ、方丈記(一二一二)。(関係ないけど、一と二が漢字で続くと可愛いな)。

 初っ端から世の無常を川に例えた文章が秀逸で前々から読もうと思っていた。ようやく手にして、ノンストップで三回ほど読んでいる。冷静すぎる視線、ぐうの音も出ない正論、ひねくれ、普通は不快な言葉も鴨長明が自然体だからか、また人生が思い通りにならなかった哀愁なのか、嫌味が全くない。清水のようにさらりと読めて、納得できてしまう不思議。驚いたのは鴨長明が私と全く同じ考えを持っていたことだ。

それにしても、愚の骨頂としか思えないのは、平安京が、過去にこの種の天変地異を繰り返してきた危険がいっぱいの土地と知っていながら、そんな所に、なけなしの金をはたいて、あれこれと悩みながら、わが家を新築する連中が後を立たないことだ。

一体全体、何を考えているのか。

引用:超約版 方丈記 p23、24

 安元三年(一一七七)四月二八日に平安京で発生した大火事、通称「太郎焼亡」についての一文。これを読んだ時、私がいると興奮した。私は昔っから高いビルや高層マンションの住人、豪華な家を建てる人の気持ちが分からず、不思議でしょうがなかった。理由は鴨長明が書いた通り。

 約八百年に自分と同じ考えの人間がいたなんて、感動せざるえない。「おお同士よ…」とか言いながら、抱きつきたくなる。まあ見方を変えれば、人の精神面は約八百年、少しも変わっていないとも取れるんだけども。

 誤解してほしくないのはそういう人達を馬鹿にしているわけではないこと。人それぞれ価値観が違うのは知ってるし、自分の意見を押し付けるほど、狂ってはいない。

 ちなみにタイトルの「超約版」は誤字ではなく、「大胆で独創的かつ斬新なスタイルの現代語訳」の意味。大胆で独創的かつ斬新とは書いているものの、原文を損なわない、繊細な訳されている。また原文も収録されているので、読み比べるのもまた一興。

超約版 方丈記

著者:鴨長明

訳:城島明彦

発行:2022

本体価格:1000円+税