嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

教えて、お坊さん!「さとり」ってなんですか(2016)

 さとりって、何?

 仏教界、最上級の難解な問いに答えてくれるのは様々な宗派の僧侶6名。聞き手は仏教ファンである小出遥子氏。対談方式で徹底的に噛み砕かれた「さとり」とは。

 曹洞宗、藤田一照氏は「つながり」をたのしんで生きること、臨済宗横田南嶺氏は夢であると気づいた上で夢を生きること、無宗派小池龍之介氏は「いま」という安らぎの中に生きること、天台宗、堀澤祖門氏は自分をまるごと生きること、泥仏人生、浄土真宗本願寺派釈徹宗氏は死では終わらない物語を生きること、浄土真宗本願寺派大峯顕氏は「ほんとうのいのち」に従って生きること。

 個人的にいいなあと感じたのは横田南嶺氏と堀澤祖門氏だ。お二方共、考えが軽やかで柔軟性に富んでおり、言葉1つ1つが心の奥へ奥へと染み込んでくる。

 みんな同じ電車に乗っているのだから一生懸命やろうとサボろうと同じ駅につく、人生の苦しみは夢、既に仏なのだからそれを認めるだけでいい。

 さとりは厳しい修行の末、どこからともなく降ってくるものだと思い込んでいた私はお二方の言葉に驚きながらも、自分でも戸惑うほど素直に飲み込めた。同時に真摯に人生と向き合い、厳しい修行も体験しているお二人がどうして偉そうに振る舞うでもなく、凝り固まらずに生きていけるのか、不思議でしょうがなかった。

 この本に登場する僧侶の皆さんの「さとり」に共通していたのは「気付き」だ。常識や日常を疑い、自分がすがっているもの、絶対視しているものを一旦手放してみる。すがっているもの、自分を手放すなんて狂気的で意味が分からない。しかしやってみると意外に快適で、むしろ前より軽々と生きていける。

 私は仏教徒ではないし、知識もない。仏像や宗派の違いもほとんど分からない。それでもさとりを、仏教を面白いなあと感じた感覚はこの先の人生で結構重要な分岐点になるんじゃないかと思っている。

教えて、お坊さん!「さとり」ってなんですか

著者:小出遥子

発行:2016

本体価格:1400円+税