嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

ムーミン童話全集③ムーミンパパの思い出(1990)

き、貴様、前回1巻を読んでいながら何故3巻を手に取ったのだ!?

 睡眠不足で図書館へ行き、帰路についた後、上記の内容を打ち込んだ。文句だけ書いてパソコンを閉じたのか。全く…睡眠不足の人間は何をするか分かりませんな陛下(ベルばら再読中)。

 個人的にムーミンパパは四六時中書斎にこもり、執筆活動に精を出しているイメージがある。いいアイデアが浮かばないと頭を抱えるパパ。二次元における創作物はほぼ100パーセント完成せず、読者が目にすることはない(管理人調べ)。

 永遠の未完と思われたムーミンパパの本が読める。それがこの本、最大の売りだ。しかもパパの朗読という破格のオプション付き。

 内容はタイトル通り、パパの回想記だ。孤児院で過ごした幼少期から仲間とのスリリングな旅、ママとの出会いまでを描く。

 回想記とあってムーミンレギュラー陣の両親や親族が多く登場する。中でも活躍するのはパパと共に旅をするフレドリクソン、ヨクサル、ロッドユールの3人だ。

「すごい発明家」であるフレドリクソンはスニフの親戚、自由人のヨクサルはスナスキンの父、気弱でボタン収集に情熱をかけるロッドユールはスニフの父にあたる。

 血は争えんとばかりに子供達と性格がそっくりな両親に驚くと共にミイとスナスキンの母が同じだったこと、この物語中誕生するミイがスナフキンより年上であることにも衝撃を受けた。あまりのショックに今でもドッキリか読み違えを疑っている。

 今回ぐっときた台詞を書き残しておく。スナフキンの父であるヨクサルは息子以上に自由を愛し、旅の間、毎日食っちゃ寝で何もしない。そんなヨクサルに不満を抱いたパパはフレドリクソンに言う。

「ヨクサルがあんなに無関心なのは、おかしいと思わないか?」

フレドリクソンの返事はこうでした。

「そういっちゃいけないね。それは反対で、ヨクサルのほうが、あんがいいろいろと気をつかっているのかもしれないよ。おちつきはらって、てきとうにね。

ぼくたちは、いちばんたいせつなことしか考えてないんだなあ。きみはなにかになりたがっている。ぼくはなにかをつくりたいし、ぼくのおいは、なにかをほしがっている。それなのにヨクサルは、ただ生きようとしているんだ。」

「生きるなんて、だれにだってできるじゃないか。」

とわたしはいいました。

引用:ムーミン童話全集③ムーミンパパの思い出

 子供の頃大切にしていたおもちゃを見つけたような感覚。どうして人は大切なものをすぐ忘れてしまうんだろう?

 ちょい役でニョロニョロが登場。眠らず、何も言わず、集団で水平線を目指すぼんやりした白い生き物。自分や周りに重なり、ドキリとする。昔に出版された本なのに的確な人間描写。作者トーベヤンソンは「すごい作家」だ。まあ見方を変えれば人間は成長していないとも取れるが。いつまで経っても人生一年生。