嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

こんな私(僕)を愛してね「pain」

私は幼馴染みに本当にひどいことをしてしまった――。

 主人公と幼馴染み、浅黄が別れたのは7歳の時。親の仕事の都合で浅黄と離れ離れになった主人公はその後も転校を繰り返していた。数年後、奇跡的に浅黄と再会するも再び主人公は転校することになってしまう…。

 必死で作り上げた人間関係、居場所を何度も壊される苦痛と恐怖。主人公の境遇は賽の河原で石を積む子供と重なる。子供達も主人公も自ら望んだわけではないのに同じ苦痛を何度も何度も強いられている。傷付き、半ば諦めの境地になりながら、主人公の精神は着実に崩壊しつつあった。そんな主人公の前に現れたのは、最愛の人、浅黄。

 浅黄の事だけは諦めたくない。

 嘘を付き、浅黃を廃墟に呼び出した主人公は彼を拘束した。いくら幼馴染みとはいえ、一線を越えた行動は彼と主人公自身を大きく傷付ける。それでも主人公は止まらない。

 嫌われてもいい、恨まれてもいい。どんな形であれ彼の記憶に残るならば。

 拘束し身動きが取れない浅黄を抱きしめ、主人公は恍惚とする。対して浅黄は暴れるでも抵抗するでもなく、されるがままだ。濃厚な狂気と緊張感を保ったまま、物語は意外な方向へ転がっていく。

 常軌を逸した主人公の言動、トラウマ級の記憶を植え付けられた幼馴染み、ギロチンのように突如として降ろされる幕。予想外の連続で体はおろか、感情の身動きさえ取れなかった。千文字縛りで作られているため、最低限の説明と描写しかされておらず、終わりも少々乱暴だ。しかし、それがゲームを終えても不気味な余韻を持続させていた。

 2人のやり取りを見るに結末は不幸ではないが幸福と呼ぶには明度が暗すぎる気がする。人目につかない廃墟で自分達だけの世界を見つけてしまった2人はその後どうなったのだろう…?

pain

ジャンル:乙女ゲーム

推奨年齢:15歳以上

制作:むらさきくまねずみ

novelgame.jp