嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか 日本の迷信に隠された知恵(2007)

 夜に爪を切ると親の死に目に会えない、鼻緒が切れると不吉、節分に自分の年齢の数だけ豆を食べる訳など昔から伝わる迷信を集め、謂れや科学的根拠などを記した本。

 大晦日に早く寝ると白髪が増える、女が風を引いたら首に男のふんどしを巻け、全部たいらげてお代わりするのはよくないなど知らない迷信が多くあった。印象的だったのは日本人が恐怖心からありとあらゆるものに神を見出していたことだ。今と違い医療や科学が発達していないので当然といえば当然なのだが。

 神や迷信のほとんどは恐怖や畏怖から発生している。日本人は生来恐怖を感じやすいのだろうか?日本に限らないのか、どうなんだろうか。

 丙生まれの女性は気性が荒いとされる謂れは、江戸時代好きな男に会うため火事を起こしたお七が丙生まれだったから。知っている歴史上の人物が迷信の原因なんてちょっと感動した。

寝言に返事をしてはいけない

(略)その理由は、昔の日本人が睡眠中の人間は仮死状態にあると考えていたためだ。

さらに、寝ている人の魂は身体から抜け出しているとされていた。抜け出た魂はどこで何をしているのかということに関しては、諸説ある。寝床の付近で神様に出会っているという説があるかと思えば、頭にのせている枕へ魂が移動しているという説もある。

どの説が正しいかは不明だが、つまりはこういうことだ。寝ている人の生命力は衰えているから、言葉を語りかけると、そのぶん、脳の疲労する度合いは強くなる。これは決して体に良い影響を与えない。

(略)もともと日本人には、夢を見ることに恐怖を覚える傾向にあった。「夢魔」と呼ばれる魔物を信じ、夢の中で出会うことを恐れる人もいた。それゆえ、寝言を言っている状態に警戒心を抱くようになったようである。

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか 日本の迷信に隠された知恵 p24,25

洗濯物を夜に干すと招かざる客が来る

(略)体を包みまとう着物には、着ていた人間の霊が宿ると考え、そのため、死者の着物を干しっぱなしにする習慣があった。

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか 日本の迷信に隠された知恵 p47

枕を踏むと頭痛持ちになる

(略)その理由は、枕に頭を乗せて眠っている人の魂は、体から抜け出て、枕に宿っていると信じられてきたからだ。

そもそも「枕」という言葉の語源は、魂が詰まった蔵のようなものを意味する「魂蔵」から来ており、魂蔵がなまって変化し、枕と呼ばれるようになったと言われている。

(略)寝ている人の魂が宿るという枕信仰は、時に人の遺体の代わりとして枕が使われるほど篤いものだった。

(略)睡眠中に夢を見るのは、昔の人も現代に生きる人も同じだが、昔の人は枕元には枕神がいて、夢はそのお告げであると考えていた。

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか 日本の迷信に隠された知恵 p95

なぜ夜に爪を切ってはいけないのか 日本の迷信に隠された知恵

発行:2007

著者:北山哲

本体価格:720円+税