嗚呼、刀葉林

読んだ本とフリゲについて、書いたり書いてなかったり。

北欧の神話(2017)

 北欧神話の先駆者的紹介者である山室静氏による本。山室氏はアンデルセントーベ・ヤンソンなどの北欧児童文学の翻訳も行った。

 以下、気になった部分の引用。

オーディンはしばしば姿を変えた。そんな時にはかれの体は死んだか眠っているかのように横たわっている。しかし、その間にかれは鳥か獣、魚あるいは蛇の形になって、一瞬のうちに遠い国へ行き、ほかの仕事にかかっているのだ」

これはシャーマンがいわゆるトランス状態(意識がふつうでない、仮死の状態)に陥った時のようすに、大変似ています。「かれはまた最大の偉力をもつ術を知り、また用いた。すなわち魔法であり、これによって人びとの運命と未来を知ることができ、また人びとの上に死や不幸や病気をもたらしたり、ある者からその力と知識を奪って、これを他に与えたりした。しかし、そういう魔法の後ではひどい衰弱が起こったので、男たちがそれを用いるのは恥だと考えられ、こうした魔法は女司祭に委ねられるようになった」

引用:北欧の神話 p64

 魔女の原型か?と引用。女性がシャーマンの地位に置かれるのは世界共通なのかもしれない。少しばかり性行為の匂いがする(気のせいか)。

また愛の神フレイヤの車は2匹の猫が引く。猫族は性の欲望が強いと信じられていたためである。

 魔女の相棒が猫であると考えられるようになった原型か?ということは魔女はキリスト教から見た異教徒?

 巨人の娘スカディは父をアスガルド(神々の国)に殺害され、復讐のため、単身アスガルドへ乗り込む。神々は女性と戦うことを嫌い、和解してくれるなら大きな代償を払うと約束。

 スカディが提案したのは「神々の一人を夫にする、それも自分で選べる権利を持つ」。神々は「足以外は見てはならない」と条件をつけ、スカディの提案を飲む。神々は顔と体を布で隠した。

 スカディは白く美しい足を見つけ、それをバルドルオーディンの息子で光の神。美しく賢い超ハイスペ神)であると夫に選んだ。が、正体はバルドルではなく港の神とされるニヨルドだった。

スカディはこの失敗で機嫌をそこねて、「あなた方はわたしに悲しみを忘れて笑い声を立てさせるのでなければ、決して怒りをしずめない」と宣言しました。
それをきいてロキが、一頭の牝山羊を連れてくると、そのひげにひもをむすび。他の端を自分の性器に結びつけ、綱引きをはじめました。
引用:北欧の神話 p123

 この様子に笑いだしたスカディは神々と和解した。

 個人的に土着信仰特有の性の寛容さは非常に惹かれるものがある。「人間も自然の一部なのだなあ」と当たり前の事を思い出させてくれるし、昔の人々の豊かな生活と心に懐かしさと羨ましさを覚えるからだ。

 本によれはロキ、ログナレクにおける神々の死、のちの再生はキリスト教の影響が見られるとのこと(反対の意見もある)。

 クリスマスは元を正せは北欧のイベントだったので日本における神仏習合のように初期は互いにゆるーく影響しあっていたのかもしれない。